工場の横を無我夢中で走り抜けた
知らない、街だった
都会とは呼べ無いながらも
ビルがちらほらある街だった
逃げていた
何処ともわからぬ道を
何かに追い立てられて
走って、走って
急な上り坂を重い足で走った
肺がひゅうひゅう鳴った
登りきった、逃げ切れた
そう、思ったのに
何かに堕とされた
何に?
わからない
嘘だ
確かに見た
あの子が見下ろしてた
あたしを、許さないとでも言うかのように
とにかく、急な上り坂をごろごろ堕ちた
あぁ、映画みたいだ
堕ちながら、ぼんやり思った
やっと止まって、不思議と体は痛くなかった
ただ、心臓が痛かった
ぎゅう、て痛くて
ひゅう、と息がしにくかった
坂の上を見上げた
もう、彼女はいない
でも、もう登る気力は無かった
右に続く、横道にそれた
知らないはずの、場所だった
なのに、いつの間にか、そこにいた
二度と、来たくない場所
周りが全て敵だった場所
立ち尽くして
それから、目をそらしてまた走りはじめた
デパートの中
人がたくさんいた
でも、誰一人知る人はいない
一緒に逃げる仲間もいないまま、逃げた
いくつもの階段を上り下りして
終わりの見えないデパートを逃げた
不思議なことに何かが近づいてくることだけは感じとれた
だんだんと、その距離は狭まる
それでも逃げた
知らない場所を
知らない人の中を
知らない、何かから
あぁ、近い、もう、すぐそこにいる
缶詰めが山のようにおかれた、食品売場だった
いる
もう、すぐ後ろに
嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ
捕まるのは、いやだっ
ひゅ、
息が鳴って
あたしは後ろを、
振り返る――――――――
見慣れた天井が見えた
まだ目覚ましも鳴らない時間
あぁ、夢だったのかと、理解した
涙が、止まらなかった
心臓が痛くて
吐き気がした
―吐く
ベットから抜け出そうとした
ぐらり
世界が回った
ベットから落ちそうになった
立てる状態じゃなかった
ベットにだらりと四肢を投げ出す
いつの間にか眠っていた
さっきの夢は、もう見なかった
ただ、揺れる世界と吐き気を置きみやげに残して
やっと動ける様になったころ、ベットから抜け出して吐いた
なんだか、苦かった
心臓が、痛かった
で、今もまたベットにいるわけだが。
いっこうに眠たくならない
夢を見るのが怖いのか
眠りすぎたせいなのか
体はだるいのに、脳が眠らない
さて、どうしたものか
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