不意に隣の気配が寝息に変わった
眠りについたのだろう
室内はまったくの暗闇ではない
月明かりかはたまた電灯の光か
とにかくなんらかの光がやんわりと差し込んできている
聞こえるのは虫の音
風は絶える様子もない
温度は暑くもなく寒くもなく
寝るのには丁度良い
これだけ好条件が揃っていて
あたしの瞼は落ちてくる気配を全く見せない
なぜだろうか
近頃の生活が昼夜逆転していたせいだろうか
場所が初めての場所だから?
様々な答えは浮かぶが
どれもこれもしっくりこない
そして
その理由を探しても
結局は見つからない
明日は晴れるだろうか
冷蔵庫のあれはそろそろ食べなくては
どうでも良い思考が頭を巡る
否
奥底ではわかっている
思い出したくない過去がある
今が幸せすぎるが故の忠告か
痛みはそう簡単に消えるものではないと知りながらあたしは
また傷口を治ったかのように振る舞うのだ
その下では
既に化膿が始まっているのに
[0回]